2023-01-01から1年間の記事一覧

マックス・ウェーバー著、野口雅弘訳『支配についてI 官僚制・家産制・封建制』(岩波文庫、2023年)

先日出版されたマックス・ウェーバー著、野口雅弘訳『支配についてI 官僚制・家産制・封建制』(岩波文庫、2023年)を読んだ。訳者あとがきに「このテクストは百年以上前に書かれたものであり、現代社会について現代の人が書いた研究ではない。しかしそれで…

イタチとキツネ

昨日放送されていた『ズートピア』を見て、キツネに対するステレオタイプは払拭されていたが、イタチのそれはされていないな、と思った。キツネと同じくイタチにも「ずるい」動物というイメージがあるが、抜け目ない詐欺師のニックと海賊版DVDを売っているデ…

二人のイサキオスの混同? 江戸時代後期の儒学者に叙述されたビザンツ帝国

杉下元明「幕末維新期の知識人にうたわれたローマ帝国」(同著『比較文学としての江戸文学』汲古書院、2023年、277-297頁。初出:『日本漢文学研究』8号、2013年、19-40頁。)を読んで、江戸時代後期の儒学者斎藤竹堂(1815-1852)が漢文で著した『蕃史』と…

女帝の時代

*当記事は2021年6月26日の著者自らの一連のツイートを元にしている*1。 義江明子著『女帝の古代王権史』(ちくま新書、2021年)によると「父系直系継承を支えるための「中つぎ」」にすぎないとみなされてきた古代の女帝が、最近の研究ではかなり主導的に統…

佐藤二葉『アンナ・コムネナ』3(星海社、2023年)

『アンナ・コムネナ』3巻を読んだ。皇子ヨハネスの初陣にあたって、彼の従兄弟たちも出陣することになる。その中にアレクシオス一世の弟ニケフォロスの息子アレクシオスがいた。彼をVarzosのコムネノス家のプロソポグラフィーで調べてみた*1。情報は少なく、…