イタチとキツネ

 昨日放送されていた『ズートピア』を見て、キツネに対するステレオタイプは払拭されていたが、イタチのそれはされていないな、と思った。キツネと同じくイタチにも「ずるい」動物というイメージがあるが、抜け目ない詐欺師のニックと海賊版DVDを売っているデュークの差のごとく、「狡知」というイメージはキツネにはあるが、イタチにはない。
 泡坂妻夫の短編推理小説の一つに亜愛一郎シリーズの「G線上の鼬」(『亜愛一郎の狼狽』所収)という作品がある。雪の日に有料道路を走行中の主人公の亜愛一郎の乗るタクシーに、タクシー強盗に襲われ逃げてきた運転手が駆けてくる。彼も乗せて料金徴収所まで行き、電話で警察に通報。パトカーを連れて現場へ向かうとタクシーは残されていた。車内には強盗の死体があり、車から出て行った足跡は一組のみだった。状況から殺害犯人はタクシー運転手以外ないように思われたが、亜は運転手証言から真相を導き出す。

「あなたは強盗を形容するのに<鼬みたいに陰険ですばしこかった>と表現したじゃありませんか。普通なら、鼬よりも狐を連想する方が自然じゃありませんか。<狐のように陰険ですばしこかった>などとね。〔以下略〕」*1

 

*1:泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』創元推理文庫、1994年、219頁。