ビザンツ

二人のイサキオスの混同? 江戸時代後期の儒学者に叙述されたビザンツ帝国

杉下元明「幕末維新期の知識人にうたわれたローマ帝国」(同著『比較文学としての江戸文学』汲古書院、2023年、277-297頁。初出:『日本漢文学研究』8号、2013年、19-40頁。)を読んで、江戸時代後期の儒学者斎藤竹堂(1815-1852)が漢文で著した『蕃史』と…

女帝の時代

*当記事は2021年6月26日の著者自らの一連のツイートを元にしている*1。 義江明子著『女帝の古代王権史』(ちくま新書、2021年)によると「父系直系継承を支えるための「中つぎ」」にすぎないとみなされてきた古代の女帝が、最近の研究ではかなり主導的に統…

佐藤二葉『アンナ・コムネナ』3(星海社、2023年)

『アンナ・コムネナ』3巻を読んだ。皇子ヨハネスの初陣にあたって、彼の従兄弟たちも出陣することになる。その中にアレクシオス一世の弟ニケフォロスの息子アレクシオスがいた。彼をVarzosのコムネノス家のプロソポグラフィーで調べてみた*1。情報は少なく、…

A・P・カジュダンのビザンツ観

この機会に、連続ツイートしたものを編集してブログに挙げてみようと思う*1。 以前ビザンツにおける科学について調べるとき、C. Mango, “Byzantium’s Role in World History” in The Oxford Handbook of Byzantine Studies (Oxford, 2008)を読んだ。そこにソ…

『アレクシアス』中の皇帝の名に因んだ金貨名称について

アンナ・コムニニの『アレクシアス』の中に引用されている二つの外交文書において、2回皇帝の名に因んだ金貨名称が登場する。 一つ目はアレクシオス1世の西の皇帝ハインリヒ4世宛書簡で、ハインリッヒに贈られた貨幣の金額は「細工された銀(イルガズメノス …

そこには、だれの肖像と銘があるか:11世紀ビザンツの金貨の品位低下と皇帝肖像に因む金貨名称

「デナリオン銀貨を見せなさい。そこには、だれの肖像と銘があるか。」彼らが「皇帝のものです」と言うと、 イエスは言われた。「それならば、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」 (ルカによる福音書(新共同訳)/ 20章 24-25節)*1 比佐篤『貨幣…

ビザンツの科学分野における貢献

イスラム科学や西欧中世の科学に比べて、科学史におけるビザンツの貢献への関心は概して薄い。 ビザンチンの学者たちは上記のような知的優位にあったにもかかわらず、彼らの良き富を利用しなかった。「学問の園」は科学史、自然哲学史においてほとんど何も花…