「最初の近代人」神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世

 塩野七生神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世(在位1220-1250)の評伝を近く出版する*1
 彼女は以前にも『サイレント・マイノリティ』(新潮文庫、1993年;単行本: 新潮社、1985年)所収の「イェルサレム問題」で、彼の「十字軍」について書いている。
 フリードリヒ2世については、佐々木毅プラトンの呪縛』(講談社学術文庫、2000年;単行本: 講談社、1998年)の序章に、とても興味深い記述があったことを思い出した。これはイギリスの教育学雑誌Journal of Educationに1944年11月から2回にわたって掲載されたOtto Neurath and J. A. Lauwerys"Nazi text-books and the future" という論文について書かれているもので、以下その部分を引用する。

 第二回目の論文においてこの二人は、一見したところ「中立」的に見える教科書の記述についての検討を続けていく。スタウフェン朝の皇帝フリードリヒ二世の例がまず取り上げられる。エルンスト・カントロヴィッツの作品やブルクハルトによって「最初の近代的支配者」と見なされているが、この人物の具体的な行為は残虐で非寛容的である。それがあたかも「寛容な、啓蒙され、前向きな」人物であるかのように叙述されている。これでは将来、ヒトラーについても同じような記述がなされるのを覚悟しなければならないようなものではないか、と二人は慨嘆する。問題なのはこうした強力で無慈悲な暴君の行為がこれらの教科書執筆者たちによって、取り繕われ、実際には天才の行為として賞賛されていることだというのである*2

 フリードリヒ2世には、人体実験の逸話が残っているように、「怪物」的なところがあった。私の記憶が正しければ、モンタネッリらが書いた『ルネサンスの歴史』*3は、フリードリヒの死から始まっていたが、彼の「怪物」性についても描写されていたはずである。
 塩野の著作ではそのあたりのところがどのように描写されるのであろうか?

*1:『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』上・下、新潮社、2013年12月18日刊行予定http://www.shinchosha.co.jp/blog/special/309637.html

*2:佐々木毅プラトンの呪縛』講談社学術文庫、2000年、38−39頁

*3:モンタネッリ, ジェルヴァーゾ著 ; 藤沢道郎訳『ルネサンスの歴史』上・下、中央公論社、1981−1982年;中公文庫、1985年