「自由」にまつわる三つの話

(回想したことをとりとめなくまとめたものです。記憶に頼っているので、一部事実とは異なる可能性があります。)
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 小学生低学年の時に、ある漢字の学習教材を読んだ。これは私のために購入されたものではない。おそらく兄のために父母か、むしろこちらの方が可能性が高いが、祖父母によって買い与えられたものであろう。それはまずお話が掲載されていて、次にそのお話に出てくる漢字の書き取りの練習ができるドリルがついているものであった。対象は小学2年生であったと記憶している。そのお話の中にこのようなものがあった。
 牧場で飼われているヤギが自由を求めて柵を越えての脱走を繰り返す。捕まった後、どんなに鞭で打たれようが、ひたすら自由を求めて脱走を繰り返す。ある時、終に森への脱走へ成功する。「ぼくは自由だ!」と喜ぶヤギ。そこへ一頭のオオカミが迫り来る。それに果敢に挑むヤギ。「ぼくの自由をじゃまするものはゆるさないぞ!」。最後に次のような地の文が置かれていた。「ヤギがオオカミにかなうわけがありません。どうなったかおわかりでしょう。」これはおそらく、「自」、「由」という文字を学習するための話だったのだろう。
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 次も小学生低学年の時のことだと思う。とあるスーパーの中にあったレストランで、注文の品が来るのを持っている間に備付けの漫画を読んでいた。『勝手にしろくま』であったと記憶している。その中にこんな話があった。
 働きアリが一匹、仕事を放棄してどこかへ行こうとしている。もう一匹の働きアリがそれを見咎めて止めようとする。「どこへ行くんだ!」「俺は事由にやらしてもらう。」後者のアリをたたき伏せてどこかへ行こうとする前者。そこへ2匹目のアリが呼んだ多数の働きアリたちが脱走アリをリンチする。他のアリたちが去って、瀕死の脱走アリ。足が一本もがれ、体液が流失している状態で呻く。「じっ、じゆう〜。」
 (確かこの後、逃亡しようとする働きアリはこのような目に合うというような地の文が続いたような気がする。)
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 これは学生時代に見ていた『ゲゲゲの鬼太郎』第4シリーズ、「天邪鬼」の回の話。山中を彷徨するねずみ男が祠(?)をみつけ、お宝があるかと思い、封印をはずす。だが、それは天邪鬼を封じ込めているものだった。封印の解かれた天邪鬼にねずみ男はこき使われる。
 天邪鬼は別荘地の社長(?)令嬢を洞窟に拉致する。そこへ駆けつける鬼太郎一行。「そんなことはやめろ!」という鬼太郎に対して、「俺に命令するな!」、「俺は自由だ!」という天邪鬼。結局、社長令嬢、ねずみ男、鬼太郎一行、天邪鬼に洞窟に閉じ込められる(洞窟の入り口に大岩を置かれる)。そこから逃がしてくれたらお礼をするという社長令嬢の言葉に、ねずみ男俄然やる気になる。鬼太郎の仲間たちも含めて地面を掘って脱出路を作ろうとするが、一番一生懸命なのはねずみ男である。社長令嬢は進捗しない作業に苛立ち、「早くしてよ!」と言い放つ。
 猫娘は「ねずみ男は一生懸命やっているじゃない!」と抗議する。「この人はお金がほしいだけよ!」と言う令嬢に対してねずみ男、穴掘り作業を続けながら振り返りもせずに言う、「そうさ、俺は金がほしいのさ。だが、俺は他の生き方をできやしない。」
 この言葉に令嬢、心を動かされる。結局令嬢含めてみんなで掘る。天邪鬼帰って来て、なんやかんやで鬼太郎と戦闘、攻防の末鬼太郎、天邪鬼に大岩を投げる。大力の天邪鬼、難なくこれを受け止めるが、それには封印のお札が貼ってあった。「俺は自由だ!」全力を振り絞ってこれに抗う邪鬼。ねずみ男は、その光景に見入っている令嬢の傍らに立ち、そちらの方を見ずに言う、「見てみろよ。必死で抵抗しているじゃないか。無理もねえ。数百年も封印されていたんだからな。」
 ついに天邪鬼が封じ込まれる。嬉々としてお礼を要求するねずみ男だが、「だめよ。私も働いたんだから。」と冗談めかして令嬢は笑う。